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犯人蔵匿および証拠隠滅の罪|罪名ガイドQ&A

犯人蔵匿および証拠隠滅の罪

犯人蔵匿罪(103条)

客体となる犯人とは、
罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または
拘禁中逃走した者

指名手配中の犯人を匿いましたが、裁判で真犯人でないことが判明した場合には、犯人蔵匿罪にはなりませんか?犯人蔵匿罪は「罪を犯した者」が対象なので、真犯人でなければ該当しないのではないでしょうか?

犯人蔵匿罪が成立します。

判例によると、「罪を犯した者」には、真犯人だけでなく、犯罪の嫌疑を受けて、捜査または訴追されている者も含まれます(最判昭24.8.9)。
指名手配中の犯人を匿った場合には、結果論として犯人でなかった場合であっても、捜査の妨害をしたことには変わりありません。

捜査開始前に犯人と思われる者を匿いましたが、捜査開始前であれば罪にならないですか?

犯人蔵匿罪が成立することがあります。

捜査開始前であっても、真に罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら、匿った場合であれば犯人蔵匿罪が成立します(最判昭28.10.2)。

「蔵匿」「隠避」とはどのような行為ですか?

「蔵匿」とは、捜査機関等からの発見・逮捕を免れる場所を提供することです。「隠避」とは、蔵匿以外の方法で捜査機関からの発見・逮捕を免れさせる一切の行為です。

具体的にどのような行為が「隠避」に当たりますか。

  • 真犯人が逮捕前に身代り犯人を立てること
  • 真犯人が既に逮捕された後に身代り犯人として出頭すること
  • 犯人を変装させた場合
  • 逃走中の者に捜査状況を知らせること

身代り犯人として出頭した被告人から依頼を受けた弁護人が、被告人からどうしても真犯人を逃がしたいとの要望を受け、自首しようとしていた真犯人を思いとどまらせ、身代り犯人の事件の判決を受けることは「隠避」になりますか?

犯人隠避罪が成立します。

同様の事案で隠避になると判断されています(大判昭5.2.7)。

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牧師が、教会に助けを求めてきた犯人から罪の告白を受け、かくまった場合は罪になりますか?

犯人隠避罪は成立しません。

判例によると、牧会活動はその行為の性質上これをなす者と受ける者の心対心の問題であって、これをなす者が心底からそれを信じて行うのでなければ魂の救済に役立たないのであり、これを他人(国家も含む)に任せるということはありえないとされます。また、牧師として一旦約束した秘密を神以外に漏らしてはならない場合もあるであろうから、牧師が被告人の所在を人に告げなかったことについても責めることはできないとされました。宗教行為の自由を明らかに逸脱したとみられるものでない限りにおいては罪になりません。

自己の刑事事件の証拠を隠滅した場合に罪になりますか?

犯人隠避罪は成立しません。

自己が犯してしまった事件の証拠を隠滅してしまう行為は、ある程度仕方のないものであるとして処罰の対象から除外されています。

自己の刑事事件の証拠が、同時に共犯者の刑事事件の証拠でもある場合、これを隠滅した場合には証拠隠滅罪は成立しますか?

誰のためにする意思で隠滅行為をしたかによって異なります。

  • 専ら他の共犯者のために隠滅した場合    →証拠隠滅罪が成立します
  • 他の共犯者および自己のために隠滅した場合 →証拠隠滅罪が成立しません
  • 専ら自己のために隠滅した場合       →証拠隠滅罪が成立しません

刑事事件に関するものであれば、捜査段階のものであっても該当しますか?

該当します。

民事事件や懲戒事件に関する証拠は対象外ですが、刑事事件の証拠であれば証拠隠滅罪の対象となります。
裁判所に係属している事件のほか、捜査開始前、捜査中を問わず、将来、刑事事件となりうべきものを含みます。

友人の事件の参考人を殺害した場合、証拠隠滅罪は成立しますか?

犯人隠避罪が成立します。

証拠とは、刑事事件の処理に関する一切の資料であり、物的証拠のほかに、証人等の人的証拠も含まれます。参考人はいつでも証人になりうる以上、証拠に含まれ証拠隠滅罪が成立します。

証拠隠滅罪の処罰の対象となる行為とは、どのようなものをいいますか。

証拠隠滅罪の行為は、

  • 隠滅すること
  • 偽造・変造すること
  • 偽造・変造の証拠を使用すること

をいいます。

証人に偽証させることには、証拠隠滅罪が成立しますか?

証拠隠滅罪は成立しません。

証人に偽証させることは、偽証罪の規定によるもので、証拠隠滅にはなりません(最決昭28.10.19)。

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捜査機関が未だ誰が犯人であるかわかっていない段階で、自分が犯人である旨の虚偽の事実を告げて出頭した場合に、犯人がすでに死亡していたとしたら、証拠隠滅罪が成立しますか?

証拠隠滅罪が成立します。

身代り出頭することは、犯人の発見を妨げる行為として捜査を妨害するため「隠避」にあたります。犯人が死者であってもこの点に変わりはありません。

親族である犯人のために証拠隠滅行為をしました。この場合でも、証拠隠滅罪が成立しますか?

犯人または逃亡者の親族が犯人または逃亡者の利益のために、犯人蔵匿罪または証拠隠滅罪を犯した場合、親族間の人情に基づく行為であり、期待可能性が少ないことを考慮して、任意的に刑が免除されます(刑法105条)。

親族である犯人のために証拠隠滅行為をしましたが、同時に、第三者の刑事事件に関する証拠でもありました。105条の任意的減免は適用されますか?

105条の任意的減免の適用はありません(大判昭7.12.10)。

よって、通常通り証拠隠滅罪が成立します。

犯人が全くの第三者に対して、自分の事件に関する証拠の隠滅するように唆した場合、第三者には証拠隠滅罪が成立します。では、犯人には、証拠隠滅罪の教唆犯(唆して犯罪行為をさせた罪)が成立しますか?自分の事件に関する証拠の隠滅行為になるので罰せられないのではないでしょうか?

証拠隠滅罪が成立します。

判例によると、犯人が第三者に犯人蔵匿を教唆した場合には、防衛権の範囲を逸脱するものであるとして、教唆犯の成立を肯定しています(大判昭8.10.18)。
犯人が自分自身の事件の証拠を隠してしまうことは仕方のないことであるとしても、他人を使って自分の事件の証拠を隠滅させることまでは期待可能性がないとは言えません。

親族が第三者を教唆した場合、105条の適用はありますか?

判例によると105条の適用はありません。つまり、この場合の親族は刑が免除されることはありません。
105条は、親族自身の行為についてのみ刑の免除を認める趣旨であり、他人を犯罪に誘い込む場合には同様に扱うことはできません。

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【参考】

103条(犯人隠匿等)

103条(犯人隠匿等)

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

104条(証拠隠滅等)

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

105条(親族による犯罪に関する特例)

前2条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

105条の2(証人等威迫)

自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

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