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覚せい剤|罪名ガイドQ&A

覚せい剤

覚せい剤事件を警察が把握するきっかけにはどのようなものがありますか?

被疑者の親族からの情報がきっかけになることもあります。覚せい剤乱用者が家族に暴力をふるい、家庭生活が破たんした結果、家族が思い悩んで警察に通報することもあります。
犯罪グループの内部からのタレこみもあります。匿名で警察に電話がかかってくることが多いようです。
覚せい剤使用者が逮捕されて、売人の情報について取り調べで話した結果、売人が逮捕されるパターンもあります。末端の使用者・所持者から入手先を追及していく捜査方法を、突き上げ捜査といいます。
こうした告発情報については、刑事が情報提供者から調書を録取して、今現在も被疑者が覚せい剤取締法違反に該当する行動をとっていることを裏付けます。

覚せい剤事件について、どのような捜査方法がありますか?

『コントロールド・デリバリー』
薬物の不正取引が行われる場合に、取締当局がその事情を知りながら、直ちに検挙することなくその監視の下に薬物の運搬を許容し、追跡して、その不正取引に関与する人物を特定するための捜査手法です。
これには、中身の薬物をそのままにして行うライブ・コントロールド・デリバリーと、中身の薬物を抜き取って行うクリーン・コントロールド・デリバリーがあります。

『おとり捜査』
情報収集活動等により麻薬・覚せい剤等の密売人と推測される者を把握した場合に、捜査官が自ら又は協力者を使って密売人に接触し、麻薬・覚せい剤等の取引を申し入れ、密売人が犯行に出たときにこれを検挙する手法です。

『通信傍受』
通信傍受法の規定に基づいて、密売に用いられた携帯電話の通話をはじめとする通信内容を傍受する手法です。

覚せい剤の密売人に対する家宅捜索はどのように行われるのですか?

覚せい剤の密売人はホテルやマンションに根拠地をかまえていることが多いようです。彼らも家宅捜索に対して警戒をしており、マンションのカギを取り替えてスペアキーを使えなくするなどの準備をしているようです。
また、関係場所が複数存在することも多く、内偵捜査を十分に行い、被疑者の出入りする場所をできる限り割り出し、被疑者の住所・居所・勤務場所、愛人宅、実家、親類宅、友人宅等平素の出入り場所、密売組織によるものであるときは、組織の事務所、密売場所等必要な捜索場所を把握し、これらの場所に対して一斉に捜索がされます。
刑事に踏みこまれた時にはトイレに覚せい剤を流すこともテレビなどでおなじみですが、パケに空気が入っていていったん流したパケが再び逆流して浮かんでくることもあるようです。ホテルではクロークが覚せい剤を隠す場所に使われることもあるようです。

覚せい剤使用を判定する尿検査を求められました。なぜ私が尿検査を要求されるのでしょうか?

覚せい剤取締法違反の前科がある者が、自動車検問などで警察官に前科を照会されて前科があることが分かった場合、所持品検査のチェックにおいて前科がない者よりも厳しくなるということです。また何も怪しいことをしていない場合でも、尿を任意で出すように求められることもあります。この尿の提出は断り続けると、刑事に何時間も粘られます。実際に使用してから1週間以内で尿を出すと確実に陽性反応が出るという人は、尿を出すといいながら、いまだに尿意をもよおしていないなどの理由で任意提出に応じないケースが多いようです。
任意出頭した被疑者が他人の尿を持参してサンプルとして提出しようとすることもあるようです。

夜道を歩いていたら職務質問をされて尿の提出を求められました。この捜査は適法ですか?

警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又はすでに行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができます。(警職法2条1項)
覚せい剤事犯を疑って職務質問をする場合は、中毒症状の疑われる挙動がある場合、覚せい剤事犯の多発する地域をうろついていたり、かねて覚せい剤の密売場所であると把握していた場所に出入りしている場合であって、覚せい剤常用者に多く見られる風貌・態度であったり、やくざ風の者と面談していたり、警察官を避ける行動にでるなどの不審な挙動がある場合に職務質問の要件が認められます。

具体的には以下のような場合に認められています。

  • 覚せい剤事犯や売春事犯の多発する連れ込みホテルの密集地帯に車を止めて遊び人風の3,4人の男と話しており、パトカーが近付くと、すぐ発進した者(最判昭53.9.7)
  • 覚せい剤事犯の多発地域で警ら中の警察官らに気づいて目を伏せ、接近するにつれて落ち着きをなくすなどの不振な態度をとり、またその風貌も、頬がこけ顔色が青白いなど、覚せい剤常習者に多くみられる外見的特徴がみられた者(大阪高判昭61.5.30)
  • 覚せい剤密売所の容疑場所と把握していた場所から、他の覚せい剤容疑者とともに出てきた、頬のこけ方などから覚せい剤の常用者であると疑われ、持っていたセカンドバッグを胸に大事に抱えるようにしていた者(大阪高判昭63.3.1)
  • 午前1時ころ、暗い路地から出てきた一見暴力団風で、覚せい剤常用者特有の顔つきをしていた者(最決昭63.9.16)

質問は、口頭で行い、口頭で回答を得るのが通常ではありますが、覚せい剤の注射痕の有無などを確認するため腕の提示を求めることなど適宜の方法が許されます。
ただし、強制的に腕をつかんで袖をまくり上げたり、着衣を脱がせたりすることは許されません。
尿の提出については、薬物使用事犯の重大性と採尿手続きの必要性・緊急性に照らし、ある程度の時間をかけた説得は許されるでしょうが、これが過度に長時間にわたった場合は、逮捕に等しい状態にあったと判断されることもあり得ます。

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覚せい剤の尿中排泄期間はどのくらい(摂取後いつからいつまで検出可能)ですか?

覚せい剤摂取後30分程度から、覚せい剤を初めて使用した場合であれば、4日間程度、乱用者の場合であれば、ほぼ1週間~10日程度です。
ただし、覚せい剤の代謝・排泄は、摂取量、摂取方法、使用歴、年齢、性別等種々の要因の影響を受け個人差があり、また、検査方法、検査に用いる尿量等によっても検出期間は左右されます。

覚せい剤をどの程度服用した場合、通常の尿鑑定で検出可能ですか?

摂取後24時間以内に採尿した場合、2㎎以上摂取していれば検出可能であり、48時間後の尿を使用する場合少なくとも10㎎摂取していれば尿鑑定で検出可能と考えられます。

「かぜ薬等市販の医薬品を複数服用していたので尿鑑定で覚せい剤が検出された」旨抗弁する場合がありますが、そのようなことがありますか?

現在市販されている薬を服用していたために尿鑑定で覚せい剤が検出されることは、決してありません。
(医療用のメタンフェタミン塩酸塩として、唯一、大日本製薬から「ヒロポン」という商品名で、粉末、1㎎錠剤、3㎎注射液が発売されているのみですが、これを購入するためには、覚せい剤研究者か、覚せい剤使用機関の免許が必要です)
また、複数の医薬品に含有される成分が体内で反応して覚せい剤になる可能性も、決してありません。

他の薬物を併用して、尿鑑定で覚せい剤を検出できなくなるよう覚せい剤の排泄を止めることができるのですか?

医薬品を用いて摂取した覚せい剤の排泄を止めることはできません。

覚せい剤を加熱吸引していた者と同室にいた場合、本人が吸引していなくても尿から覚せい剤が検出されますか?

覚せい剤を加熱して使用する場合、多少は、部屋の空気中へ拡散しますので、同室にいた場合、本人が吸引する意志がなくても、部屋の空気を吸うことにより覚せい剤を摂取することとなり、尿中への覚せい剤が排泄されます。しかし、その量はごくわずかであり、通常の尿鑑定で陽性になることはまずありません。

尿鑑定と毛髪鑑定とでは、得られる覚せい剤使用歴に関する情報がどのように異なるのですか?

尿鑑定からは、最近の覚せい剤使用歴がわかるのに対し、毛髪鑑定からは長期にわたる覚せい剤の使用歴がわかります。
しかし、毛髪鑑定のためには、通常50本以上の採取が必要とされますし、時間がかかります。検査方法としては第1次的には尿鑑定によるのが通常です。
他にも、汗や唾液、精液などを資料としても検査は可能なようです。

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脱色、染色などの処理は毛髪鑑定結果に影響を与えますか?

脱色処理や染色処理をした場合、毛髪中の薬物濃度が低くなることが報告されています。しかし、いわゆるカラーマニキュアやカラースプレーのような半永久染毛剤、シャンプーは影響を与えないようです。また、薬物の毛髪中への取り込みにはメラニン色素が関与していることが示唆されており、同一人でも、黒髪中の覚せい剤濃度の方が、白髪中の濃度より高いことが報告されています。

職務質問された際に任意で尿検査をされた後に家に帰されました。この後の流れはどうなるのでしょうか?

尿検査の結果を待って陽性反応が出れば逮捕されることになります。薬物事件の場合は在宅事件とはならず、必ず身柄を拘束されての強制捜査となるようです。

保釈は認められますか?

保釈が認められるのは困難ですが不可能ではありません。
なぜならば、裁判官は、第1に、覚せい剤を使用する者はストレスに対する耐性が弱く、公判中であるというストレスに耐えきれず、再度覚せい剤を使用してしまうことをおそれている。第2に、被告人に覚せい剤の使用を中断させ、被告人から覚せい剤を遠ざけるには勾留しておくことが最善の方策であると考えている。第3に、共犯者と通謀して口裏を合わせたり、証拠の毀損、隠匿、ねつ造したりすることを警戒しているためです。
そのため、保釈が許可されるための条件として、①犯行をすべて自白していること、②前科・前歴(とりわけ覚せい剤事件)がないこと、③覚せい剤や注射器等の用具が押収されていること、④入手経路(譲渡人)が明らかとなっており、他に譲渡していないこと、⑤身元引受人がしっかりしており、覚せい剤関係者との接触を断つことが期待できること等が必要と考えられています。

入手経路については絶対に明かしたくない場合、入手経路を話さないことで何か不利益を被りますか?

勾留、及び勾留延長がされ、保釈が認められない可能性が高くなります。
さらに、裁判官に、覚せい剤関係者との接触を断つことが期待できない、再犯可能性が大きいという心証をもたれ、量刑上悪い事情として判断されるおそれもないとは言えません。

覚せい剤取締法違反については量刑上、どのような事情が考慮されるのですか?

使用罪については、使用量・使用回数・使用期間・使用方法等が重視され、依存性・親和性の程度を判断することになります。
乱用者は1回あたり通常、約0.02~0.03グラム(耳かき1杯分)を0.25ccの水に溶かして静脈注射するとされていますので、1回あたりの使用量が上記量を超えている場合には依存性が高いと判断されることになります。
使用方法については、静脈注射(ポンプ)が多いですが、加熱吸煙(あぶり)、錠剤の服用など多数あります。静脈注射が最も効き目があるといわれていますが、加熱吸煙方法は静脈注射に比べ効き目が低く、使用頻度が高まるともいわれています。

所持罪については、その量が最も重要な量刑事情となります。所持量が多い場合には、当初単純所持罪で起訴していたが、その後、営利目的所持罪に訴因が変更される場合もあります。営利目的については、量だけでなく、パケ(小さなビニール袋)の大量所持、注射器の大量所持、計量器の所持、通帳への多数入金記録等などにより判断されます。

逮捕、採尿されました。ここ1週間以内の10回以上覚せい剤を使用しています。1度だけの場合よりも量刑は10倍重くなるのですか?

1回だけの場合も、10回の場合も直近の最終行為1回のみが対象となります。
刑訴法256条3項が、起訴状の公訴事実は訴因を明示して行うとし、訴因の明示はできる限り日時、場所、方法等で特定しなければならないとしています。しかし、覚せい剤の自己使用という犯罪類型は、尿の鑑定の結果によって覚せい剤が検出されたことにより、何らかの機会に被告人が覚せい剤を使用したことは客観的に立証できるとしても、使用の日時、場所などを具体的に立証することは困難であるので、このような場合、日時、場所、使用方法等について幅のある記載をすることが許されています。
そしてこの場合、訴因の記載は1回の使用行為のみを表示しているものと理解されますが、そう解した場合、同じ期間内の別の犯罪事実たる使用行為と区別できないので、実務上検察官は、採尿時直近の1回、つまり最終行為1回を対象として捜査し訴因としています。
10回以上の使用の場合であっても、裁判の対象となるのは最終行為1回に限られますので、1回だけ使用していた人に比べて10倍捜査に時間がかかるとか、量刑が10倍重くなるといったことはありません。
ただし、取調べや尿鑑定の結果等において常習性が認められる結果となれば、マイナスの情状として働くので量刑が重くなるという可能性は大いにあります。

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覚せい剤事件における弁護士による弁護活動のポイントは?

覚せい剤のような薬物犯罪は被害者がいない犯罪なので、示談はできません。
覚せい剤は他の犯罪に比べて特に再犯率が高く、今回の裁判が初犯か再犯かによって結果が大きく異なります。2度と薬物に手を出さないことを誓う必要があります。本人が強く誓うだけではなく、家族も監督を強く誓うことです。
覚せい剤と決別する強い意思を示すためには、入手ルートを明らかにすることや薬物に汚染された交友関係を断ち切ること、定職に就くこと、家族の会話を増やすことなどの生活の改善策を示します。ダルクなどの覚せい剤を断つことを援助する団体への加入することも一策です。

覚せい剤の尿検査で陽性反応が出ても不起訴となることはありますか?

誤使用の場合や強制的に使用させられた場合にはごくごくまれにあり得ます。

執行猶予をとることは容易ですか?

薬物一般においては、前科がなければ通常執行猶予を得る可能性が高いといえますが、同種前科がある場合にはよほどの特殊事情がない限り、執行猶予期間はもちろんのこと再犯期間となる5年間を経過しても実刑になる可能性が高いようです。

覚せい剤使用の前科がある場合、今回再び覚せい剤事犯で起訴されましたが、執行猶予を取ることは難しいですか?

事案によって異なりますが、以前の覚せい剤の裁判が10年以上の前であれば再度の執行猶予の可能性はあります。
しかし、初犯であれば執行猶予の確率が90%以上であるのに対して、2犯目になると20%以下であって、実刑の可能性が飛躍的に大きくなり、執行猶予判決をとるのは、非常に難しくなります。

覚せい剤取締法違反の前科のみを有する者が、再度覚せい剤取締法違反の罪を犯した場合の量刑状況

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【参考】

第13条(輸入及び輸出の禁止)

第13条(輸入及び輸出の禁止)

何人も、覚せい剤を輸入し、又は輸出してはならない。

第14条(所持の禁止)

覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の関係者及び管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。

第15条(製造の禁止及び制限)

覚せい剤製造業者がその業務の目的のために製造する場合及び覚せい剤研究者が厚生労働大臣の許可を受けて研究を受けて研究のために製造する場合の外は、何人も、覚せい剤を製造してはならない。

第19条(使用の禁止)

左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。
一 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合
三 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基づいてする行為につき使用する場合

【薬物事犯関係処方の主要法定刑一覧表】

所持・譲渡・譲り受け製剤・小分け・交付営利目的所持・譲渡・譲り受け栽培(製造)・輸入・輸出営利目的栽培(製造)・輸入・輸出
大麻取締法5年以下の懲役(24条の2①)--7年以下の懲役又は罰金200万円以下(24条2②)7年以下の懲役(24条①)10年以下の懲役又は罰金300万円以下併科(24条②)
麻薬及び向精神薬取締法ジアセチルモルヒネ等10年以下の懲役(64条の2①)10年以下の懲役(64条の2①)1年以上の有期懲役又は500万円以下の罰金併科(製剤・小分け・交付含む 64条の2②)1年以上の懲役(64条①)無期若しくは3年以上の懲役、又は1000万円以下の罰金併科(64条②)
ジアセチルモルヒネ等以外7年以下の懲役(66条①)7年以下の懲役(交付は除く)(66条①)1年以上10年以下の懲役又は300万円以下の罰金併科(66条②)1年以上10年以下の懲役(65条①)1年以上の有期懲役又は500万円以下の罰金併科(65条②)
向精神薬譲渡、譲渡目的所持は、3年以下の懲役(66条の4①)5年以下の懲役(交付は除く)(66条の3①)営利目的所持、営利目的譲渡は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金併科(66条の4②)5年以下の懲役(66条の3①)7年以下の懲役又は200万円以下の罰金併科(66条の3②)
覚せい剤取締法違反10年以下の懲役(41条の2①)--1年以上の有期懲役又は500万円以下の罰金併科(41条の2②)1年以上の有期懲役(41条①)無期若しくは3年以上の懲役又は1000万円以下の罰金併科(41条②)
麻薬特例法業として行う場合…無期又は5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金併科(所持罪は処罰なし)(5条)

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